GAME REPORT
新型コロナウィルス感染症により世界の日常が一変した2020年。日本のアメフト界においてもその影響は大きく、当初は大会の開催さえ危ぶまれる事態となった。しかし、多くの方々の尽力によって、普段の練習方法や試合観戦時の人数制限など様々な面で対策が講じられ、ついに2020シーズンの幕開けを迎えることができた。今年のX1 Superは2ブロックに分割され、それぞれのブロックの1位チームのみが勝ち上がる方式に変更された。これまで以上に1つの勝ち星が重要な非常に厳しい戦いとなる。我々の初戦の相手はIBMビッグブルー。昨年の対戦では激戦の末に勝利を収めることができ、結果的にこれがプレーオフ進出を決める要因となった。それはファイニーズにとって大きな勝利であったのだが、逆に相手にとっては大きな敗戦であり、雪辱を果たすという意味でもこの試合に期する思いは大きいことが容易に想像できる。しかし、勝利への気迫はこちらも負けない。今年こそ絶対に東京ドームへ。その強い気持ちを胸に、久々となるエキスポフラッシュフィールドへと乗り込んだ。眩しい日差しがフィールドに降り注ぎ、爽やかな秋風が吹き抜ける絶好のフットボール日和の中、ファイニーズのキックオフによって試合は開始された。
最初のファイニーズディフェンス。ノーハドルによってテンポよくオフェンスを展開されるが、DB#2中川のパスカット、DL#99伊藤康のタックルによって大きなゲインを許さない。サードダウンロングでパスを試みたが、ここでDL#4ローリングスが中央から激しいラッシュを浴びせQBサックを決める。相手の侵攻を許すことなく攻撃を終わらせることができた。
対するファイニーズオフェンス。立ち上がりこそミスが目立ったものの、サードダウンロングでQB#19コーディからWR#21オヌワーへの20ヤードパスがヒットする。フォースダウンで残り1ヤード。最初のシリーズであったがパントではなくオフェンスを選択。積極策に打って出た。IBMディフェンスは1ヤードの前進も許さないと7人をラッシュさせてプレッシャーをかけたが、その手が届く前に裏へと抜け出たオヌワーにパスが決まる。人数をかけた分裏に残っている守備陣は少なく、味方WR陣の好ブロックもあり、そのまま44ヤードを走りきってタッチダウン。フォースダウンギャンブルの選択が最高の結果となり、ファイニーズが先制した。(7-0)
しかしIBMも黙っていない。ファイニーズの反則によって敵陣への侵攻を許すと、そのチャンスを逃さず最後は17ヤードのタッチダウンパスを決められてしまい、すぐさま同点に追いつかれた。(7-7)
その後のファイニーズオフェンスはWR#18三木への48ヤードパス、オヌワーへの57ヤードパスが決まるなど要所でビッグプレーが飛び出すのだが得点には至らない。ファイニーズディフェンスも度々ロングゲインを許してしまうが、ローリングスの2本目となるQBサックやLB#45久保のパスカットなどによって得点を許さない。序盤の展開から昨年同様の点の取り合いが予想されたのだが、その後はお互いにディフェンス陣が奮闘。新たな得点のないまま前半は終了した。
ところが、そういった前半から一転。後半は怒涛の展開を見せる。最初のファイニーズオフェンス。サードダウンでコーディがロングパスを投じたが、これをIBM守備陣にインターセプトされ敵陣からの攻撃を許してしまう。何としても止めたいところだったが、立て続けのラン攻撃によってずるずるとレッドゾーンまで侵攻される。最後は11ヤードのパスを決められてタッチダウン。この試合、初めて相手にリードを許してしまった。(7-14)
対するファイニーズオフェンス。リードされる状況となったが焦りで浮き足立つことはなく、ミスを取り返すべく執念を見せる。サードダウンロングではコーディ自らがスクランブル発進して新たなファーストダウンを獲得すると、続くサードダウンショートではRB#44白神が中央をダイブして突破。立て続けにファーストダウンを獲得する。最後はオヌワーに25ヤードのパスが決まってタッチダウン。すぐさま同点に追いついた。(14-14)
さらにその後のファイニーズオフェンス。反則によってセカンドダウンで残り30ヤードという非常に不利なシチュエーションとなる。しかしながら、このような状況においても絶大な信頼を誇るホットライン、コーディからオヌワーへのパスは止まらない。オヌワーがボールをキャッチすると追いかけてくる守備陣をまたたく間に突き放し、そのまま75ヤードを走りきってタッチダウン。驚異的なパフォーマンスによって再びファイニーズがリードを奪った。(21-14)
このまま突き放したいファイニーズであったがやはり相手は強豪IBM、そう簡単にはいかない。3連続でパスを通されて敵陣に侵攻されると、フォースダウンギャンブルで25ヤードパスを決められてしまいタッチダウン。再び同点に追いつかれてしまった。(21-21)
ここで試合は第4Qに突入。陽は沈みひんやりとした冷たい空気がフィールド全体を包む中、ゲームはより白熱した展開となる。まずはファイニーズオフェンス。サードダウンでオヌワーへのパスを決めて新たなファーストダウンを獲得すると、さらにWR#80南本への23ヤードパスが決まり一気に前進する。その次のプレーでコーディがエンドゾーンに向けてふわりと浮かせたボールを、WR#7森がダイビングキャッチでもぎ取りタッチダウン。気迫のこもったプレーで3度目のリードを奪う。(28-21)
続くファイニーズディフェンス。アップテンポのオフェンスからパスを次々と通されレッドゾーンへと侵攻される。しかし、ここでタッチダウンを狙って放ったエンドゾーンへのパスを中川がインターセプト。ここ一番でのビッグプレーによって失点のピンチを免れることができた。
ピンチを無得点で切り抜けたファイニーズ。続くオフェンスはWR#87高尾へのパスやコーディのスクランブルによって敵陣まで侵攻する。最後にタッチダウンを狙ってパスを投じたがこのボールはドロップしてしまい、得点を奪うことができなかった。チャンスを逸したファイニーズは逆に相手オフェンスに攻め込まれる。決死のフォースダウンギャンブルも成功してレッドゾーンへと侵攻されると、最後は17ヤードのパスを決められタッチダウン。終盤で同点に追いつかれた。(28-28)
試合終了まで残り1分半。最後のファイニーズオフェンスが始まった。オヌワーへのパス、コーディのスクランブルによって時間をコントロールしながら敵陣まで前進する。相手の反則にも助けられ、レッドゾーン13ヤード地点まで侵攻していく。最後はプレッシャーをかわして右へロールアウトしたコーディがエンドゾーン内へと走り込んだキャプテン南本にパスを決めてタッチダウン。残り時間わずか5秒を残し、ファイニーズが4度目のリードを奪った。その後のIBMオフェンスをしっかりと止めきりここで試合終了。相手の再三の猛追を振り切り、シーソーゲームを制して35-28で勝利を収めることができた。
前半の展開から一転して後半は壮絶な点の取り合いとなり、最後の最後までどちらが勝つか分からない非常にスリリングな試合となった。両チームの獲得距離はファイニーズが497ヤード、IBMが411ヤードと昨年の対戦を越える数字であったことからも、この試合が激しい撃ち合いだったことを物語っている。その中でコーディとオヌワーのホットラインが再び爆発したのはもちろんだが、試合中に相手に流れを渡してしまうようなミスがほとんどなかったことも大きかった。昨年敗戦した試合は劣勢の状況に陥ったときに我慢強く粘ることができず、自滅に近い形となって敗れてしまうものも多かった。しかし、この試合ではそういったときにも崩れていくことはなく、我慢を続けながら常に好機を伺っていた。状況に左右されずベストパフォーマンスを発揮し続ける姿勢を最後の最後まで貫けたこと。それが結果的に勝敗へと繋がったといってもいい。我々は昨年よりもまたひとつ成長できた。そう思える試合であった。
しかし、細かいところを見るとまだまだミスは多く、理想とする形には程遠い。今後も厳しい戦いは続いていく。この結果に満足することなく反省を活かして成長を続け、我々を待ち受ける高い壁を乗り越えていきたい。今年こそ絶対に東京ドームへ。その挑戦はまだ始まったばかりである。
NEXT GAME HIGHLIGHT
IBMビッグブルーに35対28で勝利したファイニーズ。第2節はノジマ相模原ライズとの対戦になる。初戦は富士通フロンティアーズに敗れたものの、地力のあるチームであり、初戦のIBM同様、ファイニーズにとって厳しい戦いになるだろう。
ライズオフェンスで特に注意すべきはランニングプレイであろう。元々優秀なRB陣に加え、今年は富士通からRB#20ウイリアムス選手が加わり、更に層が厚くなっている。また、初戦は出場機会がなかったが、外国人QB#6パランデック選手が出場することになれば、ラン、パス共により脅威が増すと予想される。ファイニーズディフェンスとしては、まず相手の強みであるランオフェンスを止めることが重要になる。特にDL#52木保、#99伊藤などのインサイドDL陣の活躍に期待したい。
ライズのディフェンスは各ポジションにDL#44小宮選手、LB#5田中選手、DB#7ハイタワー選手といったキーマンとなる選手がおり、非常に粘り強いディフェンスをしてくる。昨年度のファイニーズはその粘り強いディフェンス相手に、なかなか点を取ることができなかった。その粘り強いディフェンスを打ち破るためには相手に的をいかに絞らせないかが重要になる。前節のIBM戦では35点を奪ったものの、ランプレーはほとんど止められている。今節ではOL、RB陣の奮起に期待したい。
ジャパンエックスボウルに向けて負けられない一戦、ぜひとも応援のほどよろしくお願いいたします。